第X話 7月4日


 パラララララッ!
 イングラムM11マシンガンの発射音が響く。気にせず、前に飛び、正宗を振る。
「ぐっ……げふぅ」
 彼は、首から大量の血を吹き、マシンガンを落とした。
「タツミ!」
 背後で、声が上がる。
「くっそぉ、よくもタツミを!」
 振り返ると、声の主が、拳銃……ニューナンブM60を構えていた。すばやく横に飛び、右手のワルサーPPK/Sの引き金を引く。正確に、2発。
「何……がっ……」
 1発は彼の腕を撃ち抜き、もう1発は彼の眉間を捉えた。
 その瞬間、右手の木立から、何発もの銃声が響いた。予測済みである。銃弾は、土を弾いただけだった。ワルサーを撃ち返す。だが、効果は低いだろう。さっきのイングラムを拾い、セミオートにして捨てた。これで、ごまかせるだろう。そして、別の角度から木立に潜り込む。視えた、2人だ。手に持った銃を、イングラムの方角めがけ乱射している。気配を消して背後に回り、レミントンM31を持っているほうを、ワルサーで狙撃した。
「うっ……」
「え?どうしたシュウ?」
 すかさず駆け寄り、もう1人の心臓を正宗で貫いた。……---右。
「うわぁぁぁっ!!!」
 ちょうど右手に目を送った時、バットを振りかざした男が、走り寄って来た。正宗の柄に力を込め、一気に引き抜くと、返す力で男をなぎ払う。バスッという音がして、男の腹が裂けた。
「う……そんな……こんな所で……」
 男は内臓を垂らし、血を吹いて倒れた。
 -----この向こうか。男が突っ込んできた方向を見る。とりあえず、正宗の血糊を拭く。内臓が付着していた。ついで、レミントンと、もう1人が持っていたコルトパイソンを回収する。ニューナンブとイングラムは、ほっておいた。目に返り血が入ったので、とりあえず目薬をさしておく。
 そして、男が突っ込んできた方向に向かった。腰を落として、背の高い草の中を進む。いた。小屋の前に3人。1人は、女だ。見通しが悪く、このままで射撃は無理のようだ。
 スッと、立ち上がった。服が葉に触れ、音を立てる。3人が、驚いてこちらを見た。その時すでに、左手のワルサーが発射されていた。片方の男の頭が、はじける。
「ぐおっ……」
「へ?リュウイチ?」
 まず1人。間を開けずもう1人に走り寄って、正宗を振るう。
「ひ……」
 彼は頭が割れ、脳髄をこぼし、倒れた。あと1人、女のほうに顔を向ける。
「あ、あああ……ひ、ヒロム君……や、ヤマナシさん!何で、こんなことを……!」
「何故?これはプログラムだから」
「でででも、これは特殊だって、2つのぐぐグループに分かれて戦うって……同じグループななのに!」
「そんなことは、どうでも良い。全員殺せと、命令された」
「えええええ?」
 さらに何か言おうとしたが、女は気道がなくなった。
 サイレンが鳴り響いた。プログラム終了のアナウンスが流れる。
「はいはーい、ヤマナシさんおめでとうございます。あなたが優勝よ。すぐ分校までいらっしゃい」
 アナウンスに従い、分校へ向かう。15分ほどで、分校に到着した。専守防衛軍の兵士と、プログラム管理官のイチヤナギが、出迎える。
「凄いわねぇ、味方まで殺しちゃうなんて、特殊の中でも前代未聞だわ。早速だけど、これ、鷲羽研究所という所のミナカタ博士という方から、優勝者に渡せって言われてる命令書。はい、確かに渡したわよ。」
 イチヤナギに渡された命令書を開き、読んだ。もう一度読み直し、それをデイパックに仕舞う。
「ねぇ、なんて書いてあったの?先生に、少しだけ教えて。ちょっと興味あるんだ、鷲羽研究所のこと」
 そう耳打ちするイチヤナギを一瞥し、その広い額に、コルトパイソンを押し当てた。ためらいなく、引き金を引く。イチヤナギは、何がおきたかわからないという表情のまま、崩れ落ちた。
「しょ、少佐殿!」
 近くにいた兵士が、目を剥く。その兵士に向かって、レミントンを撃った。かなりの数の散弾が直撃し、その兵士は形が変わった。
「何だ!どうした!」
 兵士が、次々と飛び出してきた。最初に飛び出した兵士をレミントンで撃ち、その間にコルトパイソンで後ろの兵士を撃つ。4人ほど、地に伏せた。5人目は、専守防衛軍正式拳銃、SIGザウエルP220を構えていた。それは発射されることなく、兵士は倒れる。
 兵士の脈を確認した後、さらに分校に侵入する。職員室を見つけ、中に居た技術官をコルトパイソンで撃つ。弾が切れ、ワルサーに切り替える。不意に、後ろに気配がした。
「貴様ぁ、何をするか!」
 大柄の兵士が立っていた。手に89式小銃を構えている。それが放たれた瞬間、右に飛びのいていた。鞘に仕舞い、腰に差していた正宗を抜き、一閃させる。大柄な兵士の、首から上が無くなった。兵士の腕は部屋に向いたまま89式を掃射し続けた。89式から放たれた弾が、職員室内のコンピュータを破壊していった。……気配。
「ヒッ、ヒィィィーーーッ!」
 1人の痩せた兵士が、悲鳴を上げて逃げて行った。後を追う。追いつかず、見逃さない速度で。その兵士は、放送室に駆け込んで言った。
「はぁ、はぁ、はぁ……こ、こちら岡山プログラム実行本部、海上分隊、応答願います。こち……」
 正宗が閃き、兵士が机に伏せた。その兵士を蹴り飛ばし、マイクに向かう。
「こちら本部。プログラムは終了した。速やかに撤収する。分隊は南の岬にて停泊して待て。繰り返す、プログラムは終了した」
「了解。南の岬にて待つ」
 返答があった。通信機の電源を落とし、武器庫に行って、催眠ガス手榴弾、防毒マスク、弾を調達した。ついで、血塗れになった服を脱ぎ捨て、専守防衛軍の軍服を着る。その後、分校を出て、南の岬へ向かう。外に出ると、すでに日が傾いていた。遠くの島に、太陽が沈みかけている。
 1時間ほどで、南の岬に到着した。木々の中から、様子を窺う。南の岬には、すでに海上分隊の船が1隻、来ていた。他の船は帰ったらしい。警戒している様子は無い。一気に駆け出した。
 船の傍まで来ると、飛び移る。甲板にいる兵士たちの頭を、ワルサーで撃った。倒れ、海に落ちていく。
「な、なんだ!どうした!」
 船内から出てきた兵士を、レミントンで粉砕する。ついで、催眠ガス弾を船内に投げ込み、防毒マスクをして侵入する。中に居た兵士たちは、催眠ガスを吸って昏倒していた。それらに1人ずつ、弾を打ち込んでいく。全員終えた後、操縦席に行き、船を発進させた。
「うおおおっ!貴様、何者だぁ!」
 暫く経った後、突然操縦席のドアが蹴り破られ、防毒マスクをした兵士が、奇声を上げ飛び込んできた。89式が乱射される。とっさに、それを床に伏せてかわした。同時に、ワルサーで兵士を狙撃する。1発目で89式を弾き、2発目で胴体を撃った。だが、兵士は倒れない。防弾チョッキか。
「死ねぇっ!」
 兵士がSIGザウエルを引き抜き、こちらに向ける。ワルサーは弾が切れていた。マガジンを入れ替えてる暇は無い。ワルサーを投げ捨て、コルトパイソンを取り出した。その時、兵士がSIGザウエルを発砲した。床を転がり、かわす。転がりながら、正確に額を狙い、撃ち抜いた。
「げっ……」
 立ち上がり、操縦桿を握る。進路を修正する。窓に目を遣ると、すでに夜だった。その夜の闇の中に、光るものがある。海図を広げて確認すると、ここは瀬戸大橋だった。今、ちょうど真下の辺りらしい。船の進路を、オカヤマ方面に向けた。






軍属指令書027666002特例1912
ミナカタ技術大佐ヨリヤマナシ特殊少尉ヘ
第74番特殊プログラム終了後
専守防衛軍プログラム担当部隊ヲ殲滅シ
自力ニヨリ鷲羽研究所マデ帰還サレタシ
今回ニ限リ専守防衛軍トノ交戦ヲ認メル
内務省・防衛省ノ許可アリ
帰還後、少尉ハ長野第70番決勝プログラムニ
生徒トシテ配属サレル見通シナリ
以上





「おう、皆元気かー?今日は、転校生を紹介する。岡山から来た、ヤマナシハラさんだ。仲良くやるようにー」
「ヤマナシです」


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